自分自身のことであれば、今の会社の中で「やるべきこと」や「やりたいこと」を見つけることはできる。色々会社に不満はあれど、やりたいことにフォーカスしていればモチベーションは保てる。
でも、例えば、「ああ、この人と一緒に働きたいな〜」と思ったとき、その人を自分が今いる会社に誘えるだろうか?権限うんぬんは抜きにして、「こっちに来て一緒に働かない?」なんて言えるだろうか?
これにYesと答えられない自分は、結局の所、今の会社を好きではないのだろうな。
それを考えると、ちょっと悲しくなる。
うん、そんなこと言っている間に「やれよ」って話ではあるんだけどね。うん。じゃ。
書評:「へんな会社」のつくり方 〜 近藤 淳也さん
言わずとしれた、はてなの社長、近藤さん(id:jkondo)の著書を再読。
- 作者: 近藤淳也
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2006/02/13
- メディア: 単行本
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この世には悪しき慣習がたくさんある。身の回りからそういった例をあげるのは、さほど難しいことではない。
以前は意味のあったことも、時間が流れ、状況が変われば適切とは限らないのだ。しかし、人はそれを中々変えようとしない。理由はと聞くと、「いままでそうしてきたから」と答える。
これではダメなのだ。
ルールや慣習は、人を縛り付けるためにあるのではない。より多くの人を楽しく、幸せにするためにあるのだ。もし、今がそうでないのなら、そのルールは今すぐにでも変えるべきだろう。
もっと常識を疑ってみること。もっと自分で考えてみること。そして、試してみること。
それが何よりも大事なのだと、この本は訴えかけてくる。
下記に最も印象に残った文章を引用しておく。
やりたいことを我慢して、自分の気持ちを抑えながら、ペースを調整して歩いている人が多い気がします。行きたい方向に向かって全力で走ってます、みたいなすがすがしい感想を抱くことはあまりありません。
満員電車や大量の人にまみれて信号を待ったりしているうちに、人生はそうやって辛抱するものだ、というような方法論を身につけている人が一杯いるような気がします。
(中略)
何かが楽しくないからといって、それを人のせいにするのは絶対にやめましょう。自分がもっと楽しくする努力を怠っているだけのことです。本当にやる気になれば、きっと自分でも物事を変えられるはずです。少なくとも確かなことは、何かを試してみなければ決して変わることはないということです。
どうすればもっと良くなるかを考える。良いと思ったら試してみる。
目次
はじめに インターネットは知恵の増殖装置
01 情報を共有する
02 仕事をする場所
03 ユーザーとともに
04 はてなの周縁から
おわりに 18歳の自分に向けて
近藤淳也のハイリスクで魅力的な二面性(梅田望夫)
この本の3つのポイント
- ルールは作り替えるためにある!もっと多くの人が楽しめるようにできるはず!
- アイデアを育て、形にする「はてな」の取り組み
- 「はてな」はユーザーと社員を信頼している。だから、色んなものをオープンにできる!
1. ルールは作り替えるためにある!もっと多くの人が楽しめるようにできるはず!
- そこにあるルールに対して「本当にこれがベストなのか?」という疑問を持つ
- ルールはたくさんある可能性の1つにしかすぎない
- そもそも変更されるためにある
- なるべく多くの人が楽しめるように変えることが重要
- ルールはたくさんある可能性の1つにしかすぎない
- ルールが当事者と関係ないところで作られる
- いつの間にか絶対視され、ルールの存在理由が示されない
- そこには「権力」と「隠蔽」がつきまとっている
- 隠蔽する理由があるのか?
- 真っ当な理由があるならそれを示せばいい
- 情報共有
- 共有するべき情報を積極的かつ適切に相手と共有する能力が必要
- 日頃から上手くコミュニケーションする努力
- 例: 遅刻したとき
- 理由を説明することで相手が納得しやすい
- 改善の提案が出てくることも
- Aさんの問題からAさんとBさんの問題へ
- 情報共有とは、自分のことを多くの人のことに変える方法
- 全ての情報をオープンにする
- ムダなものを書いちゃダメ、ではなく、どうしたら興味のある情報だけを抜き出せるか、を考える
- 議論の過程をオープンにすることで、不満が見えてくる
- 決める過程はオープンにします。変なところがあったら言ってください
2. アイデアを育て、形にする「はてな」の取り組み
- 連続的な開発と非連続的な開発
- 連続: 既に動いているコードがあって、それに変更を加える作業
- サービスの品質やユーザー満足度に貢献
- 非連続: 新しいアイデアは非連続な問題
- アイデアは常に生まれるとは限らないし、サービス化するまでのハードルも高い
- 次期主力サービスや次のビジネスとなる
- 連続: 既に動いているコードがあって、それに変更を加える作業
- アイデアを育てる難しさ
- 否定的な意見を述べるのは簡単だが、アイデアを考えた人間のやる気を萎えさせる
- 実運用に向けた現実的な議論と可能性を考えるブレスト的な議論を分ける
- 新しいアイデアに取り組むことの難しさ
- 既存サービスは売上が大きいため、新しいサービスへ取り組むための経済的インセンティブが低い
- しかし既存のサービスにしがみついているだけでは、世の中から取り残されてしまう
- 否定的な意見を述べるのは簡単だが、アイデアを考えた人間のやる気を萎えさせる
- 新しいサービスが作られるとき
- アイデアを思いついて、思わず作り始めた日曜日
- 業務に追われた忙しいオフィスの昼下がりではない
- 似た環境をつくることで継続的にアイデアが形になるきっかけにできるのではないか?
- 開発合宿と移動オフィス
- アイデアを思いついて、思わず作り始めた日曜日
- 真っ当な意見が通る組織
- 社内の風通しが悪いと
- アイデアが押しつぶされる
- ユーザーから多くの素晴らしい意見が寄せられても活かすことができない
- 次第にユーザーが離れていく
- 信頼を作るのは時間がかかり、しかもあっさり崩れる
- まっとうな意見が通る組織を!
- 意見を言わなくなるのは、どうせ言っても聞いてもらえなさそうだ、というあきらめ
- 社内の風通しが悪いと
3. 「はてな」はユーザーと社員を信頼している。だから、色んなものをオープンにできる!
- 不具合や脆弱性が出た当初
- 指摘され、1つずつ対応し、その状況を公式ブログで公開
- 不安や怒りの一部が信頼に変わっていった
- インターネット技術は日々進歩している
- 新たな不具合や脆弱性が見つかる可能性は大いにある
- 重要なことは、それにどう対処し、それらの情報がどう公開されるか
- 指摘され、1つずつ対応し、その状況を公式ブログで公開
- ユーザーとサービスを作り上げる
- 作り手の想像力には限界がある
- 完成度50%で公開し、ユーザーからフィードバックをもらう
- 50%とは?
- 1.最低限必要な機能: Blogであれば日記を各機能など、どのサービスにもある機能
- 2.そのサービスを特徴付ける基本機能: どのサービスにもあるわけじゃないが、そのサービスのコンセプトを表すために必要な機能
- 3.発展的機能: 1や2を前提としたときに必要になるであろう機能
- 1が無くてはそもそも成り立たず、2がなければ面白いと思ってもらえない
- 3はリリースしてから発展させても良い
- ユーザーの要望を知る
- サービスが初期フェーズから運用フェーズに変わるに従い、意見を取り込むことが難しくなった
- 細かな要望が多数寄せられるようになり、要望の採用率が下がった
- はてなアイデアの導入
- 株式取引の仕組みと取り入れ、ユーザーの要望が集約されるようにした
- 株式の仕組みが入っているので、採用されれば、それにのった人たちも得をする
- はてなの利益に反するであろうアイデアは、採用されないと予想されるので淘汰される
- ユーザーとはてなの利益が相反しない仕組み
- サービスが初期フェーズから運用フェーズに変わるに従い、意見を取り込むことが難しくなった
- コモンセンスの確認
- 問題の解決とは、多くの人が一番納得できるポイントを探ること
- 少ない人数による判断
- 視点の限定
- よく知っているユーザーへの同情を優先
- インターネット上の事例は次々に新しいものが出てくる
- 専門家のアドバイスも保守的な方向に偏りがち
- ユーザーと問題を共有するという選択
- 社内での議論過程や判断基準を公開
- 自分達の判断基準が大きく逸脱していれば、すぐにユーザーのチェックがかかるようにしたい
- コミュニケーションの進化
- インターネットの進化とともに最も変化したのがコミュニケーション
- それに比べるとOSも表計算ソフトも変化は小さい
- これまで人類が一度も経験したことがない、人の意識が時空を越えて繋がるということ
- その時、何ができるのかという壮大な実験
- 新たな価値の創造を模索している状態がいま
- インターネットでは誰もがルールを作る人であり、守る人
- その中で楽しさの最大化を図る創造的な行為=子供の遊びと同じ
- 遊び心
- 遊び心を持つことが、インターネットのもたらす変化への最大の防御であり、攻撃手段
- インターネットの進化とともに最も変化したのがコミュニケーション
- 会社の存在価値
- 社会に対してプラスを提供ものから、マイナス分を取った差分
- それが会社の存在価値で、その最大化をやるべき
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人の言動を評価するときに避けるべき事
他の人を経由して入ってきた情報で評価しないこと。必ず、直接本人に聞くべき。
又聞きで入った来た情報は、経由した人のフィルタによって必ず何らかのノイズが入るから。
ゆっくりと動きながら高速でこなす、を試してみた感想
Doingリストを試してみた。Doingリストって何?という質問は
辺りを読んでいただくとして、ここでは実際にやってみた感想を記しておきたい。
行動が錯綜しない
私の場合、何かの作業に取り組んでいるときに、別のことを思いつくことがしばしばある。
それが「ちょっと調べとくか」程度のことだと、つい手を出してしまったりする。で、知らず知らずのうちに行動が錯綜し、自分自身の手で自分を混乱させることがあるのだ。
このDoingリストがあると、何かを思いついたらリストの最後にそれを付け加えればいい。
この安心感は素晴らしい。「思いつき」をシンプルに管理できることが、このルールの秀逸さを示していると思った。
上から順番にやるというルールで、次に何をやるかとか考えない
優先順位を考えない、というのも楽で良い。単に上から順番にやるだけなのだ。
このルールがあるおかげで、運用が非常にシンプルになる。
もし、優先順位を考えたりするなら、一旦リストにざーっと目を通して考えなければなるまい。それは結構、面倒なものなのだ。
粒度が大きすぎるタスクを書くとちと辛いが、気にしない
リストに粒度が大きすぎるタスクを書くと、ちょっと辛い。タスクを見た瞬間に、うーんと唸ってしまう。
で、まぁ、すぐに行動できる内容にすべきなのだが、それを意識するとDoingリストのシンプルさが失われるように思う。
ここは、気にせずそのまま書いてしまおう。
では、粒度の大きいタスクにあたったときどうすればいいか?
一旦、その大きなタスクは完了にしてしまえばいい。完了というか、削除。その後、細分化したタスクをリストの最後に付け加える。
つまり、粒度の大きなタスクをリストに追加するというのは、結局のところ、「そのタスクの細分化」というタスクを追加しているのと同義なのだ。
フォーカスしているのは、あくまで「その日と次の日」程度であるということ
このリストは万能ではない。
「思いつき」という面で多少の揺らぎはあるが、基本的に目の前の作業しかリストに載ってこない。
ちょっと長めの視点からみたタスク管理には向いていないのだ。
その日の最初に、週単位あるいは月単位のリストを眺めて、必要なタスクをDoingリストに追加した方がいいだろう。