これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

ブルー・オーシャン戦略(2)分析のためのツールとフレームワーク

ブルー・オーシャン戦略のまとめ続き。ブルー・オーシャン戦略を策定・実行するためのツールとプロセスのフレームワークについての話。

戦略キャンパス

戦略キャンパスは、常にブルー・オーシャン戦略の中心に位置するツール。その企業の戦略がレッド・オーシャンへ向かっているのか、ブルー・オーシャンへ向かっているのか、ばっっちり見える化してくれる。

チャート化

戦略キャンパスには、まず業界での競争要因を並べる。そして、それぞれの競争要因に対して、「買い手にとっての価値の高さ」「企業側の力の入れ具合」という観点から、企業の戦略がどの程度なのか縦方向に・・・・うー、言葉で説明するのが難しい・・・下図を参照

このように、企業の戦略をチャート化することで、その特徴を示す価値曲線が見えてくるのである。

レッド・オーシャンで闘う企業

レッド・オーシャンで闘っている企業について戦略キャンパスを描いてみると、似通った価値曲線になることが分かる。総じて言えるのは、主な競争要因全てに力を入れていることである。
競合他社と差別化するために力をいれているはずなのに、市場(買い手)からみると判を押したように同じに見えるのだ。

ブルー・オーシャンを切り開くには

では、レッド・オーシャンから抜け出し、ブルー・オーシャンを切り開いて行くにはどうすればいいのか?
まず思いつくのは顧客調査の徹底である。しかし、これはブルー・オーシャンの創造には向かない。顧客は競争のない市場空間の作り方は知らないのだから。恐らく、「より安く、より多く」という反応が返ってくるだけだろう。
やるべき事は「視点を移す」ことである。

  • 同業他社から代替産業へ
  • 顧客から顧客以外へ

既存のフィールドで競合他社と比較することを辞めよう。差別化と低コストのどちらかしかできない、という古びたロジックを捨て去ろう。買い手にとっての価値を高めながら、同時に低コストも追究するのだ。
「ORの抑圧」→「ANDの才能」というのは、多くの優れた考え方に共通して見られるなぁ。

4つのアクション

新しい価値曲線を描くために

戦略キャンパスで競合他社とは違う、特徴のある価値曲線を描くためにやるべき事は4つだ。

  1. 取り除く
    • 業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か?
    • もはや価値がないにも関わらず、依然として提供し続けているものは何か?
  2. 減らす
    • 業界標準と比べて、思い切り減らすべき要素は何か?
    • 競合他社を意識しすぎていないか?
  3. 増やす
    • 業界標準と比べて、思い切り増やすべき要素は何か?
    • 顧客に「仕方がない」と強いてきた不都合は何か?それを解消するには?
  4. 付け加える
    • 業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か?
    • 買い手に斬新な価値をもたらすような、新しい需要を生み出すものは何か?
とりわけ重要なもの

4つのアクションの中で、とりわけ重要なものは「取り除く」と「付け加える」である。これらは、戦略キャンパス上の価値曲線に特徴を持たせるのに役立つ。

アクション・マトリクス

アクション・マトリクスとは、4つのアクションに対応したマスをもったシンプルなマトリクスのことだ。で、4つのアクションを、このマトリクスに具体的に書き込んでいく。
マトリクスに書き込むことで、次の4つの効果がある。

  1. 価値とコストのトレードオフから解放され、差別化と低コストを同時に追究できる
  2. 「増やす」「付け加える」に偏って高コストになり、あれもこれも盛り込みすぎている状態に警鐘を鳴らす
  3. 理解しやすいので活用率が高い
  4. 4つのマスを何とか埋めようとして、業界での競争要因について調べるため、無意識の前提に気づく機会が生まれる

結果、無駄なものを除き、自らの特徴を際立たせる「シンプルなもの」への進化を促すことに繋がる。

優れたブルー・オーシャン戦略の特徴

優れたブルー・オーシャン戦略の価値曲線を描いてみると、3つの特徴が見えてくる。

メリハリ

メリハリのある戦略は、価値曲線に鮮明に表れる。図に描いてみると、↓な感じ。
てきとーな図ですが、

  • 減らしたもの: 取り扱う製品の種類
  • 取り除いたもの: 実店舗
  • 増やしたもの: お届けの早さと購入のしやすさ
  • 付け加えたもの: インターネット上のショップ

を想定してみました。


限りあるリソースをいったい何処に割り当てるのか。あれもこれもではなく、価値を高めることができる2割の競争要因に集中させる。そうすることで、価値を高めつつも、コストを下げるということが可能になるのだ。

高い独自性

競合他社に負けまいとすると、独自性が失われる。他社の動きに対応した戦略になるので、価値曲線が似てくるのだ。
4つのアクションをとることで、業界標準とは違った戦略プロフィールを築くことができる。

メッセージ性

優れたブルー・オーシャン戦略の価値曲線からは、訴求力のあるキャッチフレーズを感じることができる。

3つの特徴と戦略の成否

これらの特徴を欠いた戦略は、月並みでパンチ力が弱く、周囲に伝わりにくく、かつ高コストになってしまう。それでは、レッド・オーシャンでの戦いに明け暮れるしかなくなるだろう。
3つの特徴を備えているかどうかが、ブルー・オーシャン戦略が商業ベースで成り立つかどうか推し量る最初の判断基準となる。

価値曲線について更に

3つの特徴を欠いた企業

価値曲線がメリハリを欠いている場合、そのビジネスモデルは複雑で実行に不向きだと言える。また、あれもこれもやろとしているため、コストもかさむ。
独自性がない場合、それは他社の後追いをしているだけだ。市場で抜きん出ることはできない。
訴求力のあるメッセージがない場合、内向きの戦略に囚われている可能性がある。イノベーションはあるかもしれないが、買い手に価値をもたらすものではないだろう。イノベーションを起こすこと自体が目的となっている。

レッド・オーシャンから抜け出せない企業

競合他社と似通った価値曲線が暗示するものは、当分は血みどろの競争から抜け出せそうもないということだ。おそらく、コストか品質のどちらかで他社の上を行こうとしているのだろう。そして、競合他社の多くも同じ事を考えているんだろう。
この場合、事業が成長していたとしても、それは業界そのものが急速に成長しているか、大きな幸運に恵まれているだけのこと。戦略の力ではない。運任せなのだ。

利益に繋がらない過剰奉仕

全ての競争要因に力を注いでいる場合、投資に見合った利益はあるだろうか?ない場合、それは顧客に奉仕しすぎている。買い手の価値に繋がる要素を、必要以上に提供している。

一貫性に欠けた戦略

価値曲線が規則性のない凸凹な形状を示している場合、それはバラバラな戦略を寄せ集めただけになっている。全体を俯瞰してみると、それらの寄せ集め戦略は、他社を引き離すのに役立つわけでもなく、明確な戦略ビジョンに繋がるわけでもない。

戦略の矛盾

ある競争要因を重視した戦略を立てたとしても、それを支えるはずの別の要因をおろそかにしてはならない。戦略に矛盾がないか、ちゃんと振り返ろう。

内向きの戦略

戦略キャンパスを埋める言葉や表現に、社内の専門用語が多く使われていないだろうか?その場合、その戦略には需要を創出する力はない。内向きの戦略になっており、買い手を見ていないのだ。買い手が理解し、評価してくれそうな言葉を使うようにしよう。


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