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ブルー・オーシャン戦略(6) 原則4「正しい順序で戦略を考える」

ちょっと間が空いてしまいましたが、再開。ブルー・オーシャン戦略のまとめ。今度は4つめの原則について。

戦略の策定手順

確かなビジネスモデルを築くために、正しい順序で戦略を策定しなければならない。その順序は、以下のようになる。

手順1. 買い手にとっての効用

このアイデアは、買い手に対して比類ない効用をもたらすだろうか?

手順2. 価格

入手しやすい価格になっているか?

手順3. コスト

利益が出る水準まで、コストを下げることができるか?

手順4. 実現への手立て

このアイデアを実現するうえでの障害は何か?事前に対策をとっているか?


これらの手順を、一つ一つ見ていくことにする。

手順1. 買い手にとっての効用を考える

買い手の心を捉える

技術イノベーションとバリュー・イノベーションの違いは、買い手の心を捉えるか否かである。
戦略キャンパス上の価値曲線が「メリハリ」「高い独自性」「買い手の心に訴えるキャッチフレーズ」を描いていることが、まずはバリュー・イノベーションの前提となる。その上で、新しい製品やサービスが買い手の生活をどう変えるかを考える。ここで大切なことは、技術的にどうできるかではなく、買い手にどのような効用をもたらすかどうかである。

効用を生み出す6つのポイント

買い手にとっての効用を生み出すために、6つのポイントがある。

  1. 顧客の生産性
  2. シンプルさ
  3. 利便性
  4. リスク低減
  5. 楽しさや好ましいイメージ
  6. 環境への優しさ
顧客経験の6つのステージ

買い手が製品やサービスを利用する場合、以下の6つのステージを経験することになる。

  1. 購入
  2. 納品
  3. 使用
  4. 併用
  5. 保守管理
  6. 廃棄
障壁を取り除けたか確かめる

効用を生み出せるかどうか判断するために、顧客経験のサイクル全体で、製品やサービスが障壁を取り除けたか確かめよう。効用を妨げる要因がどのステージにあるか、6つの効用ごとに探るのだ。以下の問いを参考にすると良い。


購入について

  • 必要とする製品を探すのにどれだけ時間がかかるか?
  • 購入場所は行きやすく、訪れたいと思わせるか?
  • 安心して取引できる環境だろうか?
  • すぐに購入できるか、それとも待つ必要があるか?


納品について

  • 納品までの期間はどの程度か?
  • 簡単に梱包を解いて設置できるか?
  • 配送の手配は買い手に委ねられているか?その場合、コストと手間はどのくらいか?


使用について

  • 使用するのに研修や専門家の助けがいるか?
  • 使わないときの保管は容易か?
  • 機能や特徴はどの程度優れているか?
  • 通常の利用者が求めるよりも、遙かに多くのオプションや大きな性能を備えているか?余計な機能や付属品が付きすぎていないか?


併用について

  • ほかの製品やサービスがなくても使えるか?
  • 他の製品やサービスが必要な場合、そのコストはどれくらいか?
  • どの程度の時間を要するか?
  • 大きな骨折りを必要とするか?
  • 手に入れやすいか?


保守管理について

  • メンテナンスの外部委託は必要か?
  • 保守や更改は簡単か?
  • 保守管理のコストは?


廃棄について

  • 製品の利用に伴い、廃材が出るか?
  • 楽に廃棄できる製品か?
  • 安全に廃棄するためには環境や法律の問題が絡んでくるか?
  • 廃棄にはどれくらいコストがかかるか?
効用マップを使う

効用マップとは6×6のマトリックスで、縦軸に効用を、横軸に顧客経験を並べたモノだ。
この効用マップに、検討中の製品と既存製品を当てはめてみる。その結果、既存製品との差がきれいに見えてくるようであれば、その新製品はこれまでと異なった効用を買い手にもたらすことができる。反対に、既存製品との差があまりないようだと、ブルー・オーシャン創造の可能性は低いと言えるだろう。

手順2. たぐいまれな効用から戦略価格へ

価格設定する際の狙い

新製品やサービスの価格は、買い手の惜しみない支出を引き出すように設定しなければならない。二番煎じを撃退するために、ターゲットとする買い手を発売当初から大勢惹きつけるのだ。

ステップ1. 顧客の密集する価格帯を見極める

ターゲットとする買い手が大勢いる価格帯は何処だろうか。それを見極めるための比較対象を探そう。以下の3つのカテゴリから探すと良い。

  1. 同じ形態の製品・サービス
  2. 形態は異なるが、機能が同じもの
  3. 形態・機能とも異なるが、目的は同じもの
ステップ2. 顧客の密集する価格帯の範囲内で価格を決める

価格帯が分かったら、次は競争を防ぐ価格を見極めることになる。2つの要素について考えてみよう。

  • 特許や著作権で、どの程度保護されるのか?
  • 模倣するにあたり、資産や能力がどの程度必要なのか?高いほど模倣は困難になる。

これらが期待できる場合、価格帯の上限に近い価格設定が可能になる。


一方、以下に当てはまる場合、価格帯の中間から下限の価格設定をすることになる。

  • 製品の固定費・変動費共に高い
  • ネットワークの外部性に大きく依存する

この場合、コスト構造は規模の経済性と範囲の経済性に大きく左右される。売れば売るほど、コスト優位性が上がるのだ。そのため、価格設定は低めにしなければならない。

手順3. コスト目標の達成へ

価格が決まったら、次は利益面の充実を考える。

価格マイナス方式

設定した価格から、望ましい利幅を引く。これで目標とするコスト水準が分かる。
価格は戦略的に設定したものなので、変えてはいけない。コストプラス方式(コスト+利益)で価格を決めないように。

コスト目標をクリアするための3つの手法

コスト目標をクリアするために、3つの手法がある。

  • 合理化によるコスト革新
  • 他社との提携
  • 業界の価格モデルを覆す
合理化によるコスト革新

これは業務プロセスの合理化である。コストがかかる割に付加価値を生まない部分。それを見極めて削ぎ落とす。
こういうのにはABC/ABMが役に立ちそう。つまりマジカが役に立ちそう。業務フローのダイエットって、こういうことか。

他社との提携

他社の専門性を活かすことで、コストを抑えながら規模の経済性を享受する。

業界の価格モデルを覆す

以下について検討してみよう。

  • 売り切りからリースへ
    • 例: レンタルビデオ
  • 時間貸し
    • 例: ジェット機の時間貸しサービス
  • 小口化
    • 例: 投資信託において、良質のポートフォリオを小口化することで、一般投資家にも利用可能にした
  • 無償で提供
    • 相手の売上の一部等から代償を得る。
      • レベニューシェアとか?
価格設定時の注意

ある業界ではイノベーション的な価格であっても、別の業界では一般的な価格体系かもしれない。

手順4. 導入へ向けて

コスト目標をクリアできたら、最後は導入へ向けて利害関係者の理解を得よう。利害関係者は、3つのグループに分けられる。

  • 従業員
  • 事業パートナー
  • 消費者

彼らの理解を得るために、新しいアイデアの必要性について、オープンに話し合う機会を設けよう。
これについては、原則5で更に詳しくみていく。

BOI(ブルー・オーシャン・アイデア)インデックス

最後に、ブルー・オーシャン戦略の有用性について、4つの評価尺度から検証しよう。

  • 効用
    • 比類ない効用はあるだろうか?
    • この製品を何としても購入する理由はあるだろうか?
  • 価格
    • 多くの人々にとって、手に届きやすい価格だろうか?
  • コスト
    • 目標コストは達成できるだろうか?
  • 導入
    • 導入の障壁に対し、あらかじめ対処してあるだろうか?

それぞれについて「+」「−」をつけてみよう。