これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

ブルー・オーシャン戦略(7) 原則5「組織面のハードルを乗り越える」

ブルー・オーシャン戦略のまとめ続き。5つめの原則です。この原則と次の6つめの原則は、戦略を「実行する」にあたっての考え方が書いてありました。

4つのハードル

ブルー・オーシャン戦略を実行する際、障害となる4つのハードルがある。

  1. 従業員の理解
    • 従業員にとって、それまでのレッド・オーシャンでの業務は、なじみ深く、しかも利益を出してきた仕事である。何故事を荒立てようとするのか、と従業員が反発する可能性がある。
  2. 経営資源の不足
  3. 従業員の士気
    • 要となる人材の士気をどうやった高め、どう行動させるのか。
  4. 社内政治
    • 「我が社では立ち上がる前に撃たれてしまう」

ティッピング・ポイント・リーダーシップ

ブルー・オーシャン戦略では、これら組織面のハードルを越えるために、ティッピング・ポイント・リーダーシップという手法を提示している。ティッピング・ポイント・リーダーシップによって、低コストで、しかも短期間に組織面のハードルを乗り越え、さらに従業員の後押しも得ることができる。
以下は、このティッピング・ポイント・リーダーシップの説明がメインとなる。
「20:80の法則」で8割くらいの説明が終わってる気がするのはきっと気のせい。

大きな影響力を持つ一部の人々

信念を抱き、熱意を傾ける人の数が一定数を超えると、それが大きな流行になる場合がある。ポイントとなるのは、大きな影響力を持つ人達を見極め、そこに労力を集中させることだ。そうすることで、資源と時間を節約することができる。

意識のハードルを乗り越える

数字によるメッセージ

数字によるメッセージには、人の心を動かす力はあまりない。例えば、売上や利益の低迷を数値として示して発奮させようとしても無駄だ。好業績の人は、それを自分の問題として捉えず、経営上層部の問題と考えるだろう。業績低迷にあえぐ人は、警告を突きつけられたと考え、解雇を恐れて職探しに走るかもしれない。

実際に経験する

実際に経験したものは、鮮明に記憶に残る。「見ることは信じること」なのである。
実際に悲惨な現状を見せることで、意識を変えよう。市場に目を向け、顧客の不満を聞くための機会を設けよう。市場調査を外部委託しているところもあるが、それはやってはいけない。必ず、自分達でやること。

経営資源のハードルを乗り越える

3つのポイント

経営資源が少ない場合、それを増やそうとする前にやるべき事がある。手持ちの資源の価値を高める方法を考えるのだ。3つのポイントがある。

  • 重点地域
    • 少ない経営資源で業績が著しく向上する可能性のある活動
  • 非重点地域
    • 多大な資源を要するが、業績の押し上げ効果は乏しい活動
  • 資源交換
    • 余剰資源を他の活動へ回すことで、不足を補う
重点地域を見極める

業績押し上げ効果の一番高い活動を見極めよう。そこが資源不足であれば、非重点地域から資源を引き上げ、重点地域へ投入すること。
ほんと当たり前のことだと思う。が、実際、私が目にしてきた会社は、往々にして非重点地域に資源を割いているように思う。問題としては、

  • そんな意識が無い
  • 意識はあるが業務の効果を測定する術を持ってない
  • 社内の抵抗
  • 組織の力学による強制

あたりがあるように感じます。

士気のハードルを乗り越える

壮大な戦略ビジョン

組織を脱皮させたい時、多くの経営者は社員のモチベーションを上げるために、壮大な戦略ビジョンが必要だと考える。しかし、モチベーションのニーズは多様化しており、実際は面従腹背を生む結果となるだろう。

ティッピング・ポイント・リーダー

ブルー・オーシャン戦略では、次の3つを行うことで士気を上げる。

  • 中心人物に接近する
  • 金魚鉢のマネジメント
  • 目標を細分化する
中心人物に接近する

努力をいたずらに分散してはいけない。組織に強い影響力を持つ中心人物に働きかけよう。
中心人物は、周囲の心を動かし、尊敬を集め、生まれながらにしてリーダーの資質を持っているような人達のことだ。彼らに徹底して働きかけよう。

中心人物を「金魚鉢」に入れる

中心人物の優れた行動、あるいは無為無策が〜金魚鉢の中が丸見えで分かりやすいように〜目立つようにしよう。これによって、中心人物にとって、無理無策でいることのリスクが高くなる。遅れれば目立ち、変革を推し進めれば光が当たる。
この金魚鉢のマネジメントが高い効果を出すには、「公正なプロセス」がポイントになる。関係者全てを巻き込み、透明性と公平性を高めよう。また、意志決定の根拠や昇進・据え置きの判断理由、どのような業績を期待しているかについて、明快に示せなければならならい。

細分化して自己変革を促す

掲げた目標は、あまりにも遠大で実現不可能に思えるものだ。
様々な階層の従業員が、自分の仕事と関係付けられるまでに目標を細分化しよう。そうすれば、従業員にとっては、自身の当然の責務を果たせば良いだけになる。
また、そこまで細分化された目標は、全てを網羅した行動計画となるだろう。ブルー・オーシャン戦略の遂行責任が、一人一人の従業員に委ねられるのである。

政治的なハードルを乗り越える

大敵と守護神

変革を推し進めるとき、戦いを挑んでくる者は誰だろうか?あるいは、ブルー・オーシャン戦略によって、もっとも大きな損失を被る者は?
誰が一緒にスクラムを組んでくれるだろうか。最も得をする者は?
誰が大敵で、誰が守護神なのか自問しよう。

一人で闘わない

後押しをしてくれそうな人や足をすくおうとしている人を味方につけよう。両方に利益をもたらすことを考えるのだ。
また、守護神達と幅広く手を組むことで大敵を孤立させよう。上手く孤立させることができれば、相手は早い段階で戦意を失い、闘うのを諦める。

「常識」を置き換える

心構え

あらゆる課題に同じだけの労力は必要ないのである。影響力の大きな要素を見極め、そこに集中的に働きかけよう。

組織を動かす

従来の常識では、組織を変革するには大勢の心を動かすのが極意とされた。だが、それでは資源と時間がかかる。
ティッピング・ポイント・リーダーシップでは、極めて大きな影響力を持つ人に働きかける。そのため、低コストで速やかな戦略転換を実現することができる。