これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

自己満足なマネジメントしかできない管理職

この管理職の方は、何を狙ってこのような振る舞いをしたのでしょうか。
私には自己満足にしか思えません。

突如、烈火のごとく怒って「お前は何様だ!  そんなにやりたいことがあるんだったら、就職なんてしなくていい。ひとりで会社でも作りなさい!」と、その学生を怒鳴りつけたのです。会場はシーン。叱られた学生は見るからにショボンとしてしまい、会場には何ともいえない空気が漂いました。

 しかし、話しはこれで終わりません。セミナーが終わって控室に戻る途中、さきほど怒鳴った管理職の方が、前川氏に「さっきの彼いいね」と言ったのです。

 学生や20代の会社員のみなさんは、この言葉の意味がわかりますか? 

  答えはシンプルです。管理職の方は続けてこういったそうです。「あいつみたいな奴が部下なら、徹底的に鍛えたいな」。実は噛みついてきた彼の尖っている部分を評価していたのです。骨があると思ったのでしょう。ですが、ストレートに褒めるのではなく、一度叱ってみせたのです。


この記事を読み進めると、最後に

  • 「会社組織のなかで会社員として働くこと」を正しく理解することが必要なのです。

と締めていますが・・・。
就職セミナー会場での管理職の方がとられた行動と、この結論には因果関係ないように思います。
少し、私なりに分析をしてみます。


まず、学生君に起きたことは何かというと、「ショボン」という表現から、ネガティブな感情反応を得たものと想像されます。


条件:企業の管理職クラスの人から罵倒された
反応:ショックを受けた、恐怖を感じた、(公衆の面前なので)屈辱を感じた、など


一方、この結果をもたらした行動は、「自分の価値観に基づいた意見を述べる」でしょうか。


条件:セミナー会場、企業の管理職クラスの人がいる、就職コンサルの人がいる
行動:自分が正しいと考えている意見を述べる
結果:管理職の人から罵倒された


行動の原則に従うと、次のようなことが言えます。

  • 行動の結果、いいことが起きたり、いやなことを避けられたなら、その行動を繰り返す
  • 行動の結果、いやなことが起きたり、いいことが無くなったりしたら、その行動を避けるようになる

ですので、件の学生君は、これから「積極的に自分の意見を述べる」という行動を避けるようになるかもしれません。(オペラント条件付け)
もちろん、確実にそうなるというわけではなく、彼のこれまでの経験や、今回のケースでどの程度のショックを受けたかにもよりますので、実際にどうなるかは分かりませんが。


もう1つ、考えるべき事があります。
それは、「派生の原理」が働く可能性です。


学生君が罵倒されたとき、彼は次のような状況に置かれていました。

  • 就職活動中
  • セミナーに参加し、多数の参加者がいる
  • 企業の管理職クラスの人がいる
  • 会社(就職)というものについて質問をした
  • 正しいと考えている自身の考えを述べた

派生の原理に従うと、これらの状況に、罵倒された時の感情的な反応が関連付けられる可能性があります。


つまり、

  • 今回罵倒した管理職の方に似た雰囲気を持つ人が怖くなる
  • 大勢の前で質問をすることや、自身の意見を述べることに、恐怖や不安を感じるようになる
  • 会社や就職活動自体に恐怖や不安を感じるようになる

といったことが起きるかもしれません。(レスポンデント条件付け)
もちろん、これも可能性であって、実際に今回の経験だけでこうなるとは限りません。


しかし、私が改めて思うのは、

  • 罵倒した管理職の方は、この学生にどんな行動と思考をして欲しいと考えたのだろうか?

ということであり、

  • 今回の管理職の方のアプローチが、狙い通りに機能すると考えているのだろうか?

ということです。
もし、管理職の方の狙いが、「本心では反発や恐怖を感じながら表面上は上司の指示に従う社員」を育てたいなら、まさに狙い通りですけどね!


自己満足なだけのマネジメントは、百害あって一利なし。
多分、こういうことは会社の中だけでなく、学校や家庭などでも起こっているのでしょうね。


誰かを指導・教育する立場にある全ての人へ。


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