これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

怒る上司はダメ上司

最近、行動分析学について再学習をしています。
ブログで「こうやってはダメだ」と書いてきた幾つかのことについて、何故そうなのかが分かってとても面白いです。
今日は、それを一つ紹介してみたいと思います。


会社に怖い上司っていますよね。
今日は怖い上司が何故ダメ上司なのか、それを書きます。

怒る → 部下がちゃんと仕事をする

部下が仕事をさぼっているとき、何とかしようとして怒る人がいます。
怒られた部下は、次もまた怒られるのは嫌なので、とりあえず頑張って仕事するようになります。
これは、行動分析学的に言うと、「嫌子消失による行動の強化」といいます。


嫌子とは、避けたいと感じるものです。
強化とは、行動が繰り返されやすくなることです。
「嫌子消失による行動の強化」とは、行動した結果、避けたいと感じるものがなくなったので、その行動が繰り返されやすくなることを意味します。


つまり、怒ることによって部下がちゃんと仕事をするようになる場合、次のようなことが起こっています。

行動前:怒られる → 行動:ちゃんと仕事する → 行動後:怒られない

部下にとって怒られることは嫌子として作用しますので、ちゃんと仕事をすることによって怒られなくなった場合、嫌子が消失しますので、「ちゃんと仕事をする」という行動が強化されるのです。


ここで終わると何の問題もないわけですが、今日書きたいことは「怒る上司はダメ上司」なわけです。
というわけで、当然ながら続きがあるわけです。

そもそも何でさぼるのだろうか

少しだけ話が逸れますが、説明しておいた方がいいと思ったので書きます。
そもそも部下は、何故仕事をさぼるのでしょうか。
繰り返し仕事をさぼる場合、その「さぼるという行動」が強化されていることが考えられます。


仕事自体が避けたいものであるなら、これは嫌子として働きます。
さぼることによって、嫌子が消失しますので(その瞬間は仕事をしないで済む)、ここでも嫌子消失による行動の強化がおきます。


また、Webページなどを見てさぼっている場合、それを見ること自体が楽しいかもしれません。
これは「得たいもの」として認識されますので、嫌子の反対で好子となります。
仕事中にさぼってWebページを見る場合、今度は「好子出現による行動の強化」が起こります。
まぁ、簡単に言えば、Webページを見ることが楽しいので繰り返してしまう、ということですね。


このように、仕事をさぼるという行為自体を強化する要因があるため、勤務中にちゃんと仕事をせず、さぼることを繰り返してしまうわけです。


ところで、上司というのは部下に四六時中張り付いて怒ることが可能でしょうか?
通常、部下は一人だけではありませんし、上司にも自分の仕事があるはずです。
全ての上司が自分の部下をずっと監視し、さぼった瞬間に怒るなんてことをしていては、会社として成り立たなくなるでしょう。


なので、部下からみると、さぼっても怒られないことがあったりするわけですね。
一方で、好子については、仕事をさぼれば、ほぼ毎回得ることができるわけです。
どちらがより強く働くかは、容易に想像できます。


かくして、一度怒られただけでは、部下はちゃんと仕事をするようになりません。
上司は、そんな部下のさぼりを気付く度に(とはいっても毎回気付いているわけではない)、部下を怒り続けなければなりません。
このことが、上司をダメ上司にしてしまうのです。

怒る上司=ダメ上司の理由

ある程度の期間にわたって度々怒られている場合、部下にどのようなことが起きているでしょうか。
実はとても興味深いことが起きてしまうのです。


当初は「上司に怒られる」ということが嫌子として機能していました。
しかし、何度も繰り返しているうちに、「上司」自体が嫌子として機能するようになってしまうのです。
これを行動分析学では「派生の原理」といいます。


上司自体が嫌子として機能するようになると、仕事をする上で色々と不味いことがおきます。
なぜなら、嫌子を避ける行動、つまり上司を避ける行動が強化されてしまうからです。
上司への報告・連絡・相談の頻度が下がったり、面談などでも本音を話さなくなったり、接触する時間を減らすためにYesマンになったりします。
部下→上司という情報の流れが減少、または最悪の場合、断絶してしまうのです。


こうなってしまうと、頻繁にトラブルも発生するでしょうから、ますます上司は怒ることになります。
これではますます嫌子としての機能を強めますので、その部下と上司の関係は悪化の一途を辿ります。


怒ることは、仕事の質を上げるために一時的な効果はあるのですが、1〜2ヶ月くらいの期間でみた場合は逆効果になることが分かると思います。
よく「怒らない上司はダメ上司だ」という意見を言う人がいますが、そういう人に限って、このパターンに嵌っているような気がするのは、私のまわりだけでしょうか。


じゃぁ、どうすればいいの?ということになりますが、ちょっと長くなってしまいましたので、それについてはいずれ。
下記参考文献を読んでもいいかと思います。
特に1冊目の方は読みやすいのでおすすめです。

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4 行動分析をどのように実践したらよいのか


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追伸

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内容は、行動分析学を中心に「夢をかなえる行動」について色々と書いていく予定です。
興味があればどうぞ。