僕たち人間は、変な生き物です。
安心すること、安定すること、快適であることを求めるのに、退屈してくると今度は刺激と変化を求めます。全く反対の欲求を同時に持っているわけです。
まだ見ぬ未来を欲しいと願うことも、しょっちゅうあることでしょう。多くの人を巻き込んだ壮大なものであろうと、ごく個人的なささやかな願望の実現であろうと、それらがもたらす刺激と変化への期待に僕たちは胸を踊らせます。
僕たちは、何故、刺激と変化を必要としているのでしょうか?
妥当な答えの一つとしては、行動を学習するためです。行動の前後で、僕たちにとっての世界が変化するので、僕たちは行動を学習することができます。
- 何か物が得られる。
- 何かをやれる機会が得られる。
- 誰かからの注目が得られる。
- 感覚的な心地よさが得られる。
- 今ある辛さから抜け出すことができる。
そこに好ましい変化があるから、僕たちはそれに繋がった行動を繰り返すようになります。それが僕たちに組み込まれた、環境に適応するためのプログラムです。
以上が行動分析学的な説明。
ただ、そんなことはどうでも良かったりします。いや良くはないですが、今回の主題ではないのです。理論的なあれこれはありつつも、結局のところ僕たちが主観的に感じているのは、
- ワクワク
- 喜び
- 情熱
- 楽しさ
- 渇望
などです。
夢がもたらしてくれる感情は、僕たちの行動を鮮やかに彩ってくれます。未来を描くことは、今、この瞬間の人生を充実させてくれるのです。
人生を充実したものにするには、2つの方法があります。
1つは、「やることそのものが喜び」である行動に専念すること。これ、最強です。端から見るととんでもない努力をしているように見えるのに、本人はただ楽しんでやっているだけという無敵状態。
こういう行動は、僕たちを天才にしてくれますので、遊びだろうと仕事だろうと大切にした方がいいでしょう。大きな財産になります。
それで、もう1つが今回の本題である、未来を描くことです。未来を描き、いまからやろうとする行動に喜びを付加することです。そうやって見つかる行動も、僕たちにとってはやはり「やりたいこと」であり、実行できる条件が整えば、際限なく求めていくことでしょう。
ただ、未来を描くことが苦しさの元になることもあります。
ここで描く未来とは、理想です。夢です。
だから、いま置かれている現状とはギャップがあるはずです。そのギャップがなかなか埋まらない時、僕たちの世界は変化を失います。
行動しても、何も起こっていないかのように感じてしまうのです。この状態を、行動分析学では「消去」と呼びます。せっかく学習したはずの行動の生起頻度が減少し、いつの間にかやらなくなってしまいます。
この時に主観的に感じているのは、
- 苛立ち
- 不安
- 失望
- 無力感
- 劣等感
などでしょう。
およそ僕たちが避けたいと思う様々な感情ですね。
でも、僕は思うのです。こういった感情すらも、人生を彩るものではないかと。
- 上手くいくかどうか分からない不安と恐怖に、怖気づきそうになりながらも、必死に堪えている僕たち。
- 上手くいかなかった失意と無力感で、どうしようもないくらい落ち込んでいる僕たち。
- 他の人が上手くいっている様を見ながら、言い様のない焦燥感や苛立ちに振り回されている僕たち。
実に人間らしいと思うのです。魅力的です。
そしてそんな状態でありながらも、いまこの瞬間を楽しむことができます。ほんの少しだけ、自分の感情を自覚してみることです。
あー、いま不安なんだなぁ。
まぁ、僕も人間だしなぁ。
仕方ないよねぇー。
僕たちは、普通は避けたいと思う感情すらも、大局的な観点からみれば楽しむことができます。ちょっとだけですが。それが、愛すべき僕たちです。
ネガティブになってしまった自分を、あまり異常だと思わないでください。それは、健全な感情の働きです。
必死に無くそうとする必要もありませんし、怖がって避ける必要もありません。無くそうとしたり、避けようとするから余計に苦しくなります。
だから、未来を描くことに何の躊躇も必要ありません。描きたいと思うように描いてみればいい。勿論、実現するかは分からないです。
それでも、「いま、この瞬間の行動の為に未来は描いてみる価値がある」のです。
何か欲しいものがありますか?
なら、それを手に入れたところを想像してみればいい。
何かやってみたいことがありますか?
なら、それをやっているところを想像してみればいい。
誰かに評価され、称賛されたいですか?
なら、評価され、称賛されている自分を想像してみればいい。
感覚的な心地よさに身を任せてみたいですか?
なら、それを味わっている自分を想像してみればいい。
今の辛い状態から抜け出したいですか?
なら、脱出できた自分を想像してみればいい。
実験です。
未来を思い描くことが、そして未来に繋がる選択をしてみることが、果たして今日この日をどう彩るでしょうか。試してみてください。
さぁ、恐れることなく、「まだ見ぬ丘の向こうの景色」を思い描いてみましょう。想像するのはタダですから。無理する必要はありませんけどね!
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