これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

Webサービスへの満足は、Webサービスそのものには無い

しがないWebサービス開発者ではあるが、使ってもらうからには満足してもらいたいという想いがある。
だから、満足とは何か、ということを良く考える。


まず、ユーザーはWebサービスを使い始める前に「期待」を抱くはずである。なぜなら、何も期待しないのであれば、そもそも使おうとしないからだ。
ということは、使い始めてくれたユーザーを「とりあえず満足」させるには、Webサービスが期待に応えられるものでなくてはならない。
「使用前の期待感」と「とりあえずの満足」を一致させるには、どうすればいいだろうか。
そもそもユーザーの期待とは、一体何で、どこからやってきたものなのか。


ちなみに、ここで「とりあえず満足」と書いたが、それには理由がある。
使い始める前の期待(あるいは期待以上)に応えることと、ユーザーが本当に欲しかった結果を得ることは、同じではないからだ。詳しくは後述。

期待の正体

期待とはつまり何だろうか。何に期待しているのだろうか。
ずばり、それは「変化」である。それも感情の変化だ。より具体的に言えば、成長した、楽しい、嬉しい、繋がった、貢献できた、重要感を得られた、などである。
だから、期待とは「感情の変化への欲求」なのだ。


では、その欲求がより具体化する瞬間はいつか、ということになるけど、それは最初にWebサービスのメッセージに触れたときだろう。
ここでいうメッセージとは、広告やリリースを知らせるブログエントリ、セールスレターなど、Webサービスが何を提供できるかを表現したもの全てを指す。

感情の変化を一致させることが、満足感を生む

よって、「使用前の期待感」と「とりあえずの満足」を一致させるためには、メッセージによって刺激される「感情の変化への欲求」と、Webサービスを利用したときに得られる「実際の感情の変化」を一致させなくてはならない。
そのためにやるべきは、提供しようとしているWebサービスが

  • どんな人たちに、どんな感情の変化を起こさせるか

を具体的に定義することではなかろうか。
この定義を基に、Webサービスを開発するし、マーケティングも行う。


また、マーケティングに伴うメッセージによって、Webサービスを利用したときに得られる「実際の感情の変化」に限りなく近いものをイメージして貰わなければならない。
リアルに感じて貰わなければ、正しくWebサービスの価値を表現しているとは言い難い。
恐らく、コピーライティングなどのスキルが必要だ。


以上が上手くできれば、利用し始めたユーザーの多くは、満足して使い続けるのではないだろうか。
とりあえず、は。

Webサービスへの満足は、Webサービスにはない

では、なぜ「とりあえず」が付くのかに言及したい。
結論から言えば、行動し続けることの難しさがあるからだ。


ただ、この辺りはWebサービスの性質によって傾向が違う。
例えば、「ニコニコ動画」などは、使うこととゴールが極めて近いので、即、感情の変化を得ることができるだろう。
一方で、ブログやタスク管理ツール、習慣化ツールなどは、使って即、感情の変化を得るというわけにはいかない。
最初は、マーケティングメッセージの印象が残っていたり、新鮮だったりするので、欲しかった感情の変化が得られたかのように感じる。しかし、それは蜃気楼のようなもので、元々の期待感が現実化したものとは違う。
本当に欲しかった感情の変化を得るためには、しばらくは継続して使わなければならないのだ。


更には、こういったケースの場合、Webサービスそれ自体は、手帳と同じような道具としての位置付けになる。本当にやるべき行動は別にあって、それをサポートするためのツールとしての存在だ。
だから、使い続けることよりそのものも、やるべき行動をやり続けることが、欲しい感情の変化を得るための条件となる。
ところが、この本当にやるべき行動を続けることは、とても大変なのだ。結構な割合の人が、挫折する。
しかし、元々の期待感はWebサービスに紐付いているため、それがそのままWebサービスへの満足度へ反映される。
この辺りに、ユーザーを満足させることの難しさがあるのではなかろうか。


よって、Webサービスを構築する場合には、道具としての優秀さももちろん必要なのだが、ユーザーに結果を得てもらうために、Webサービス以外の部分でどういったことを提供できるのかも含めた、トータル的なサービスモデルの設計が要求されるのではなかろうか。
結果を得るためのノウハウや、実際のコミュニケーションを通したサポートなど、Webサービスに満足してもらうためには、実はWebサービス以外のところに鍵があるような気がしてならない。


ということを、約1ヶ月半ほど前に考えて、ようやく文章にできましたとさ。
では。