これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

なぜ貼り紙を変えたら行動が変わるのか

本日のネタは「市役所の職員なんだが」より。
公園のトイレの話なのですが、当初、

  • 使用後は必ず流して下さい

という貼り紙だったものを

  • 水を流さない場合は、この中に10円入れて下さい

に変更したところ効果てきめんで、以降、清掃が楽になったとか。
なぜ、貼り紙の文言を変えただけで、こんなにも効果が違うのか考察してみたい。


まず、文言以外の部分について最初に言及しておきます。
元の記事には

ある時、ひらめいた俺は、トイレの入口の所に、小さな貯金箱を置いて、
「水を流さない場合は、この中に10円入れて下さい」
と書いておいた。

と書いてありますので、貼り紙とともに貯金箱を置いたようです。
これは、そもそも貼り紙に気づくという点において、元よりも優位だと思われます。
「使用後は必ず流して下さい」という貼り紙は、どこのトイレでもみかけるようなありふれたものですから、改めて注意を引くようなものではありません。
一方で、貯金箱が一緒に置かれていたとするなら、その新鮮さから目を引くことになってもおかしくは無さそうです。
というわけで、まずは貼り紙が認知されるか否かという点で、一歩リードしていると思われます。


しかし、それで貼り紙を読んだとして、人の行動に影響を与えるか否か、という点が気になります。


実は、言葉は人の行動に影響を与えます。
事実、私たちは言葉で定義されたたくさんのルールに従って行動しています。
これをルール支配行動といいます。
ただし、言葉であれば何でもいいかと言えば、そうではありません。
ルールに従うだけの理由が必要です。
その意味で、2つの文言を比較してみたいと思います。


まずは元々書いてあった文言です。

  • 使用後は必ず流して下さい

このルールに従った場合の行動を分析してみます。

  • 条件:用を足した後
  • 行動:水を流す
  • 結果:一手間がやや負担になる(↓)、トイレがキレイになる(↑)

こんなところでしょうか。


一方で、新たに貼り出された紙の文言です。

  • 水を流さない場合は、この中に10円入れて下さい

同じく、このルールに従った場合の行動を分析します。

  • 条件:用を足した後
  • 行動:水を流す
  • 結果:一手間がやや負担(↓)、トイレがキレイになる(↑)、10円払わなくていい(↑)

なんと、結果が一つ増えてしまいました。
ちなみに上向きの矢印は本人にとってプラスになるであろう結果、下向きの矢印はマイナスになるであろう結果を示しています。


このように、ルールに従った時の結果が明示されていることが、ルールとして機能するか否かに差を与えているのだと思います。
もちろん、その結果が有効かどうかも考える必要はあります。
が、まずはルールに従ったらどうなるか、それがある程度具体的に分かることが肝心ですね!


追記。
貯金箱の存在が確立操作になっている可能性もありますね。
貯金箱があることで、実際に10円を払うことが可能になるので、「流さないなら10円払う」という嫌子が有効になりそうな予感。