これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

特別講義『成果を出し続ける経営マネジメント 行動分析学にもとづいたアプローチ』 に行ってきた。

法政大学にて開講された特別講義『成果を出し続ける経営マネジメント 行動分析学にもとづいたアプローチ』 に、ABA-LABOのメンバーと連れ立って行ってきました。

Julie Smith 博士が行動分析学をビジネスの分野で活用し、多くの企業の業績に貢献してきたという話で、ポイントを押さえてとても分かりやすく解説してくださいました。以下、その時のメモから自分なりの纏めをシェアします。

 

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photo credit: lili.chin via photopin cc

 

多くの企業が抱える問題

経営戦略の変更を実行に落とし込めないでいる。新たな成果を求めて戦略を変えるのだが、戦略と成果を結ぶのは組織の具体的な行動なので、そこが変えられないと成果も出ない。Julie Smith 博士が携わってきたのは、まさのそのミッシングピースの部分で、行動分析学を使って戦略を行動という形に落としこんでいくコンサルティングやコーチングをされているようです。

『戦略の変化 ⇒ 行動の変化(欠けたピース) ⇒ 成果の変化』

これはなにも企業だけの問題ではないですよね。個人レベルでも同じような課題を抱えている人はたくさん居ます。欲しい成果も分かっているし、何をやればいいかも分かっている。でも、その間をつなぐ行動が実行できないってパターンは、僕自身たくさん観てきました。その意味でも、今回の講座はとても興味深く拝聴しました。

 

指示するだけでは行動は変わらない

行動分析学を学んでいる人には当り前ですが、行動を変容させるのは「行動に伴う結果」です。所謂ABC分析のCによって、行動が強化されたり弱化されたりするわけです。

ところが多くの企業で社員に行動させるために取るアプローチは、ほとんどがAに関するものです。つまり、先行刺激を変えることで行動を変えようとする。○○をしなさいといった指示等がこれにあたるわけですが、それで行動が変われば苦労はないですよね、っていうか変わらないわけです。

結果として、せっかく描いた戦略が形にならず、業績もなかなか改善しないということに。

 

実行者にとって得があるから行動が促される

行動を変容させたいのであれば、その新たな行動を実行することが、実行者にとっても得であることを示す必要があります。何をもって「得」と考えるかは、これまた難しいところだとは思いますが、本人にとって行動に伴う結果が「勇気づけられるもの(Encourageと表現されていた)」であってこそ、行動が促されるわけです。

だから、新たなに実行すべき行動が決まったら、A(先行刺激)-B(行動)-C(結果)の枠組みで、行動が促されれるような仕掛けを組織内に実装する必要があります。

 

勇気づけのツール

講座内で上がっていた勇気づけのツールは、次の4つ。これらを上手く活用して、行動が促されるようにCを作り込んでいく。

  1. インセンティブ:報酬や賞与
  2. ワークプロセス:例えばiphoneのようなツールを使わないといけないとして、それ自体が使いやすくて、使えば使うほど褒められるようになっていれば、みんなそれを使うようになるでしょう。恐らく変容させるべき行動についてそうなるように工夫しよう、ということかと。
  3. アクティビティ:作業の順番を変えるだけでも難易度を変わる。例えば、難しい作業の後に楽しい作業をする等。
  4. フィードバック、ソーシャル:社会的承認。ありがとうと感謝されたりすること。他の3つのツールが使いづらい場合でも、これは必ず使うことができる。

 

『4:1 Ratio』本日最大の目玉!(個人的に)

ある夫婦に難しい課題を与え、15分間、どのようなやりとりをするか観察すると、統計的にその夫婦が10年後に離婚しているかどうか分かるそうです。

何を観察するかというと、ポジティブな反応(Encourage)とネガティブな反応(Discourage)の比率を見るのだそうです。ポジ:ネガの比率が4:1よりもネガティブに振れていると、多くの場合、10年以内に離婚するのだとか。また、ポジ:ネガの比率が13:1を超えてポジに偏ると、これもやはり上手くいかないのだそうです(ウソっぽいコミュニケーションになる)。

夫婦関係に限らず、長期的な関係を構築するためのポイントとして抑えておくと良いかと思います。4:1比率が実現できている企業の離職率は低くなるとのこと。ポジ4、ネガ1って凄いですよね。大抵の企業はポジ1、ネガ4になっているような^^;<思い込み 

やる気を継続させるための比率と捉えることもできて、何か行動を定着させたいのであれば4:1の比率でポジティブな結果が得られるような仕組みを作るといいようです。

 

E-TIP分析:ABC分析をより使いやすく

E-TIPという分析手法が紹介されていて、ABC分析との組み合わせがとても素敵でした。ABC分析のCについてより詳細に分析するための枠組みで、ETIPに沿ってCを作りこんでいくと行動を定着させやすそうです。

  • Effect:それは行動を勇気づけるものか、阻止するものか。
  • Timing:行動後、即時に起きる結果か、それとも遅れて現れる結果か。即時に起きる結果であれば、行動に対する影響力が強い。
  • Importance:本人にとって重要な結果であるか(人によって何が重要な結果かは異なる)。 
  • Probability:結果が得られる確率。めったに起きないのであれば、効果は低い。

ABC分析で見出したCについて、更にE-TIP分析をすることでCがどの程度行動に影響しているかが把握しやすくなります。

 

以上っす!

最後にJulie Smith 博士のCLGのホームページはこちら。著書もあるようですが、英語なので…。