これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

内発的動機ならば先延ばしは起きないのか?

Q. 自分の内側から出てくるモチベーション、
  つまり、内発的動機だと先延ばしは起らないのでしょうか?

f:id:h-yano:20140108002909j:plain

photo credit: JustABoy via photopin cc

内発的動機付けというと、外部から与えられる報酬や罰に依存しない、自分の内部に発生する感情的な満足さを動機とするいう意味で語られることが多いように思います。そして、大抵の文脈では、報酬や罰に依存した動機(外発的動機)よりも、内発的動機の方が良いものとして語られることが多いのではないでしょうか。

内発的動機が成立すれば、外部からの報酬などで動機付けする必要がなく、自発的にどんどん行動することになりますので、それは、まぁ、内発的動機の方がいいよねってことになるのかもしれません。

 

それは外発的動機なのか、内発的動機なのか。

ところで少し、僕の話をしてみたいと思います。僕は将棋が好きで、特に将棋倶楽部24というインターネット上で対戦できるサイトを利用しています。

で、僕は将棋の対局をするのはとても好きだし、やっている最中はとても熱中して楽しいものです。こういった僕の感覚は、先ほどの内発的動機に該当するものだと言えます。

でも僕がこの将棋倶楽部24で対局する理由は、内発的動機のみにあるとは思えません。将棋倶楽部24での対局は、レーティング対局とフリー対局に分かれ、前者の対局では勝敗に応じて自分のレート(点数)が上下します。後者の対局ではそういったレートの変動はなく、純粋に将棋の対局のみとなります。

 

僕が将棋をする理由は外発的?内発的?

ここで、レートの上下は外発的動機に当たります。レートが上がれば嬉しいし(報酬)、レートが下がれば辛い(罰)。かなり一喜一憂するので、実に上手く機能した外発的動機だなぁ、と思うわけです。

で、負けが増えてくるとレートが下がってくるので、これは辛いわけです。頭に血が上って対局を続けることもありますが、これ以上下がるなら止めようかな…となることもあります。ではそこで、レートの上下に関係がないフリー対局をするかというと、そうでもないんですね。

 

また、レートが上がって自己ベストを更新できるような時もあります。いままでに無いレベルにレートが到達して、対戦する相手もレートもそれに合わせて上昇し、ワクワクとドキドキを感じながら対局することがあります。

これは自己ベストを更新することによって自分の成長感であったり、達成感といったものを感じているのだと思われます。これは、レートの上昇という外発的要因が内発的動機を刺激しているようにも見えます。

 

内発的動機と外発的動機は
大抵混在しているし見分けもつかない

何が言いたいかというとですね、何か特定の行為をする場合、そこには内発的動機も外発的動機も混在して存在しているということなんです。内発的動機のみで行動するとか、外発的動機のみで行動するといったような状況は、現実にはなかなか考えられないように思えます。

仕事をすれば報酬が貰えます。でも、仕事そのものも楽しいかもしれません。仕事仲間とのコミュニケーションも楽しいかもしれません。僕たちの行動は、常に複合的な要因によって促されますし、またその実態を眺めてみると、それが外発的なものなのか、内発的なものなのかを判断するのが難しいケースも多々あります。

 

先延ばしに関係しているのは
動機の「見た目」ではなく「行動の理由」だよ。

良いことが起きるので僕たちは積極的になる。

最初の質問に戻ります。内発的動機だと先延ばしは起こらないのか?という問いについては、ここまで書いた内容を踏まえると、そもそも内発的動機だったら…という前提が成立しないのかな、と思われます。

しかし、敢えて仮定の話として、純粋に内発的動機の定義するような理由によって行動しているとしたら、先延ばしは起きにくいのかなとは思います。しかし、それは「内発的だから」ということが重要なのではなく、内発的動機が行動を促している「理由そのもの」の方が重要です。

つまり、行動すれば良いことが起きる、という理由そのものが先延ばし防止に貢献してくれているだけで、それが内発的なもの(将棋が楽しい!)であろうと、外発的なもの(レートが上がる!)であろうと、あまり関係はありません。

 

仕事と報酬の関係は? 

尚、では仕事の給料だってそれに該当するじゃないかと思われがちですが、これは違います。月々もらえる給料は、どちらかというと「既に得ている権利」だったりするので、今日仕事をすることで得られるものではありません。

報酬のために仕事をするとしたら、その理由を正確に表現するなら、「今日この仕事をすることによって報酬を得る権利を失わずに済む」ということになるでしょうか。これは嫌なことが起きるの阻止する(好子消失の阻止)という理由なので、ギリギリまで先延ばしにする可能性は多いにあります。

あ、でもサボってもバレなければ給料はもらえるかもしれませんので、月々の給料の場合は、もしかすると「仕事をする」と「報酬」の間に明確な関係性すらないかもしれませんね。